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見る目を養う方法

 どうしても見る目に自信のないという方がいるが、これは残念ながら経験値でしかない。


 しかし、諦めなくても大丈夫である。

 多少勉強は必要であるが、見る目を養う方法はある。
 ポイントを絞ればさほど難しくはない。

 なぜかと言えば、名品といわれるモノや、名人といわれる人間が作ったモノは、絶対に誰にも同じ事が出来ないから名品であり名人なのである。
 

 陶器に限らず文字や、絵、工芸品など人間の手で作り出されたモノには、必ず作り手の人間性や作り手の癖が出てくるものである。贋作(がんさく=偽物)や真似をして作っている場合などは、自信のない下品でセコイ物になってしまうのである。
 では、実際にどうしたら「見る目を養う」ことができるのか、それは「本物(良いもの)だけを見る事」に限る。

 むしろこれ以外にない。
 それから、見るポイントを押さえることが大切である。なんの知識もないのに「なんとなく良いと思う」ではなく、モノには全て「見かた」があるのだ。

 桃山から江戸初期に活躍した歴史的な総合芸術家で、書や作陶で有名な「本阿弥光悦」という人物がいる。光悦の有名な話で、彼の本業は刀の研ぎや刀の鑑定をしていたらしいが、なぜ本物と贋作の区別がつくのかと問われた光悦は「私は本物しか見ていないからだ」と答えている。

 かの「北大路魯山人」は、関東大震災で骨董の名品が壊滅的被害にあい、当時経営していた「美食倶楽部」で料理を提供するための骨董の食器が集まらなくなった事がきっかけで作陶を始めている。これが当たり人気を博したが、その後も作陶の資料として名品収集は続けており、見る目を養っていたというのである。

 そして第79代内閣総理大臣を務めた「細川護煕」氏は、政界引退後、たった数年で陶芸家として活躍されているが、「私は良い物しか作らない」と言っている。いやなるほど、驚くほど良いモノを作っている。細川と言えば、茶人大名「細川幽斎」や利休七哲の一人である「細川忠興(三斎)」の子孫にあたり、肥後細川家18代当主である。当然のように細川家の家宝である名品や名碗を、幼い頃から間近にしているのであろう、それはそれは目が肥えるわけである。

 

本阿弥光悦「不二山」 北大路魯山人「織部扇鉢」 細川護煕「井戸盃」

本阿弥光悦「不二山」

北大路魯山人「織部扇鉢」

細川護煕「井戸盃」

 とは言え私たちは、あくまで趣味である。鑑定士になるわけでも、陶芸家になるわけでもない、ぐい呑好きな酒呑みなのだ。なにもそこまで大げさな事をせずとも、また全てのジャンルを制覇する必要もない。

 好みに合わせて、産地を限定し、釉薬や焼け色を限定し、もっと言えば作家まで限定して、見所(特に高台が良い)も限定してしまえば良いのである。そうすると1ヶ月もあれば、この作品がその作家であるか違うかの区別くらいは付くようになるのである。
 あとは、その数を増やすか増やさないかだけである。

 勉強の場は、できれば骨董店ではなく、専門店か百貨店の美術画廊や美術フロアが良い。
 実は、骨董店はその店主の力量が全てなので、店主の専門外、得意分野以外のものは極端に無知な場合も多く、贋作や駄作が混ざることもある。また骨董店は名品ばかりを置いているわけでもない。
 百貨店も食器売り場ではなく美術画廊の方が良いというのも、それと同じような理由である。目を養う為の勉強なので美術品の方が良い。また最近は、美術画廊のメイン商品が「ぐい呑」であることが多いので一石二鳥である。
 いきなり購入する必要はないので、まずはしっかり見て研究する事が一番の近道である。そして、その後気に入ったものは実際に購入し、使い比べてみる事によって、見ているだけは分からなかった違いも理解できるようになるのである。骨董店へ行くのは、眼力に自信がついてからの方が良い。
 このように少しずつトレーニングしたら見る目は養うことができる。

 

中村六郎作 「酒呑」高台
中村六郎 陶印
山本陶秀作 「酒呑」高台
山本陶秀 陶印
金重陶陽作 「酒呑」高台
金重陶陽 陶印
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